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zoom RSS 「獄門島」〜真の恐ろしさ・・・ (追記) (一部訂正)

<<   作成日時 : 2006/10/26 22:30   >>

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「獄門島」に関して今まで気にしていなかった点に目がむいた。


そのきっかけは。先日のめとろんさん同様、探偵もの(当然その他の分野にもだが)に非常に深い考察をされるブタネコさんの「●獄門島(上川版)」(http://buta-neko.com/blog/archives/2006/10/post_721.html)の記事を読んでである。

それは「謎の復員兵」に関してである。
その記事の中で、ブタネコさんは、

>原作を読んだ方ならお判りの事だが「謎の復員兵」の存在により、壊れた与三松や早苗や 間も無く復員してくるはずの一(ひとし)等が 事件全体になんらかの関わりを疑われ、謎が謎を呼ぶという ともすれば柱的エピソードのひとつなのだ。

と書かれている。

記憶が一番鮮明な市川版「獄門島」にて検証する。
おっしゃる通り、「獄門島」には謎の兵隊服の男が出現する。彼の存在は警察、実行犯、早苗を惑わせ、そして金田一の推理をも最初まどわすことになる。
重要なエピソードである。

そして、このブタネコさんの記事にコメントを寄せられた、めとろんさん。これもまた、非常に興味を引かれた内容であった。

>昔、「横溝正史読本」(角川文庫 緑三○四)を読んだとき、同書の「自作を語る」の項で、僕の大好きな箇所があったのを思い出しました。以下、抜粋ー
「小林 (前略)それで、あれ、本当は犯人は一人なわけですよね。(横溝、笑う)それがぼくは、非常にうまくできてると思います。それで、最後に、詐欺の男が来てて、犯罪そのものの動機が崩壊しちゃうでしょう。あそこがやっぱりおそろしいですね。復員詐欺で・・・。

そう「獄門島」には謎の兵隊服の男がもうひとり出現する。冒頭にひとしの復員を親切に鬼頭家へ伝えにいった男である。

「獄門島」は3つの条件がそろわなければ、殺人はおきなかった。

  寺の鐘の返還
  千万太の死
  ひとしの生還

この3つがそろわなければ、鬼頭嘉右衛門のあさましいまでの執念も実らなかったのである。
そして、この3つは同時に揃わなければならない。いや時間差では揃うことがありえないのである。
役場にひとしの戦死公報が入ればその瞬間に成立しなくなる。

実行犯(原作では実行犯達)はこの条件が同じ日に揃ったことに、嘉右衛門の執念、人間のあさましい業に、恐怖にもにた感情を抱き決行を決意する。

つまり、“本当は犯人は一人”、そう復員詐欺がなけらば条件はそろわなかった。詐欺の判明で動機が崩壊する。彼の存在自体が事件の幕開け。まさにミステリーの醍醐味。

島に何の関係もない、本鬼頭と分鬼頭の争いなど微塵も知らない人物によって、この殺人事件は引き金を引かれる。
ミステリーの恐ろしさを感じる。

しかし、その意味での犯人は一人か?
本当にミステリーの醍醐味、恐ろしさは・・・・(私の考え過ぎか・・・)

3つの条件は上記のように、同時でなくては存在(わずかな猶予はあろうが)しない。
市川版で検証しているのだが、実行犯は同じに揃ったことに一番、衝撃を受け、突き動かされる。

もう一人いる。条件をそろえた人間が。

復員詐欺と顔を合わせ、釣り鐘と共に島に渡り、千万太の戦死を報告した男。
千万太の妹達を助けてくれと頼まれ、彼でなくては真相はつかめなかったであろうその張本人、金田一耕助・・・・



画像


画像



皮肉で非情なまでの運命の、時のいたずらである。
金田一耕助が島を訪れた日、それが事件の動機を強固なものにし、幕開けを早めた。
のちに千万太の戦死公報がはいった。しかしその時既に第一の凶行は行われていた。そして、全てが終わり、金田一が真相を明らかにした時、ひとしの戦死公報が入る。
なんという・・・、言葉がみつからない、「獄門島」、横溝正史・・・








※本記事は原作の詳細を忘れている私が、あくまでも市川版を元に検証し、記述したものです。

※一部、原作の設定と混乱している記述がありましたので、一部訂正しました。



※原作を読み直しての「獄門島」についての最新の記事は、こちら

『「獄門島」(’77 東宝)  正に市川崑 の金田一耕助 』
http://toridestory.at.webry.info/200705/article_9.html


 


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『獄門島』この映画を見て!
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2007/04/01 14:14
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映画評「獄門島」
☆☆☆★(7点/10点満点中) 1977年日本映画 監督・市川崑 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
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獄門島(1977)
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Belle &amp;Eacute;po...
2007/05/07 20:51

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コメント(8件)

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今晩は ブタネコです。

コメントが遅くなって申し訳ありませんでした。^^;
また、この度は 拙記事を御引用賜り恐縮です。

さて、獄門島…

管理人さん御指摘の通り3つの条件が揃わなければ事件は起こらなかった…
その点が 実は重要な点で、であるがゆえに実行犯は その条件が揃う事は
無いだろうと引き受け、その条件が揃った瞬間 呪縛から逃れられなくなっ
てしまう…

その部分の動機付けが 原作では実に巧妙に描かれているんですよね。

だから、その部分をおざなりにした脚本・構成の映像を見ると私の如
き狭量な自称ファンは怒ってしまうのです。^^;

ただ人が殺され、その殺し方や犯人を探偵があばくだけ… 横溝ワー
ルドはそんな安易なものじゃ無いんです。^^

「何故」って部分に情がからみ説得力がハンパじゃない^^;

なのに多くの映像は「情」や「説得力」を2の次にしてしまう…

悲しいばかりです。^^;
ブタネコ
2006/10/30 02:09
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
なぜ事件がおきたか、その動機が横溝作品の場合、奥深くそこに様々な思念が絡んでいる。それ故に金田一も複雑な思いを抱えるのですが、そこが十分理解せずに製作する作品は頭にきますね!

探偵ものですので謎を解いていく過程を描くのも当然ですが、しかし、あばくにつれ動機の深さが浮き彫りになるのですよね。
その点からすると、今は「獄門島」はTVではむずかしいのかなと思う点があります。この点も記事にしようと思っているのですが、第一の現場での了然和尚のあのセリフです。
また、
>動機付けが 原作では実に巧妙に描かれているんですよね。
そうなんですよね。しかし、記事でも何度も記述してますが、原作を夢中で読んだのは20年前で今は手元にもありません。是非、読み返したいと思っています。
ではまた。

イエローストーン
2006/10/30 18:35
こんばんは、めとろんです。イエローストーン様の記事と、ブタネコ様のコメントを読み、その深い愛と洞察に感動しております。
そうですよね!横溝正史作品の面白さーそれは、トリックやストーリーテリングの見事さと同時に、その独特の"世界観"にあると思うのでした。
横溝先生は「いったいわたしは芝居の言葉でいう『世界』がきまらないと書けない作家である。芝居の『世界』と少しちがうが、筋だのトリックだけでは書けない作家である」と語っていました。ぼくは、拙文「思いつき悪魔の手毬唄考」でも書かせていただいたように、例えば先生自身の"出生の秘密"にまつわる経験であったり、喀血後の上諏訪療養時代の苦衷だったり、戦争体験だったり…、トリックやプロット以外の『世界』に、その想いやテーマを(密やかに)埋め込まれたのでは…と思われるのでした。
だからこそ、トリックやプロットのみで語られがちな探偵小説の中にあって、永遠に輝く"何か"を感じることができるのではないでしょうか。
本当に、啓発的な記事をありがとうございました!
めとろん
2006/11/02 01:28
めとろん様、こんにちは。

『世界』がないと書けないという横溝先生自身の言葉、重いですね。
やはりそこにおっしゃる通り、様々な想いを埋め込み、結果、作品の奥深さというか、説得力、永遠に輝く"何か"を我々に感じさせるんだと思います。
こちらこそ、大変勉強になるコメントありがとうございます。
イエローストーン
2006/11/03 10:00
こんにちは!
あきすとぜねこの、トーコです。
コメントありがとうございました!

イエローストーンさんは、何度も反芻しながら作品を味わってらっしゃるんですね。
記事が深く掘り下げてあって、とても面白いです!

>もう一人いる。条件をそろえた人間が。
・・・・・・・・・・・・・金田一耕助

背筋がゾクッとしました!!
気が付きませんでしたが、そうですよね!
これに気が付いてしまうと、本当に怖い!
金田一自身にコマを揃えさせるなんて皮肉!無情!
このトリックを思いついたときの横溝さんはニヤリとかしたのでしょうか?
ぎゃー、怖すぎるー!!




トーコ
URL
2007/05/05 10:25
トーコさん、コメントありがとございます。

しつこいんですよね。まっ、それだけ大好きなんですが、でも要は自分でも気がつかないんですよ。何回も見ているのに。で、しつこく見ていて、気がついた時に、記事を書いてます。思いこみが激しく無理な解釈もあるかもしれませんけど・・・。
でも、この条件をそろえた件は、私も怖くなりました。横溝正史、恐るべし!!
イエローストーン
2007/05/05 12:32
トーコさん、上記のコメントの件、早くも訂正です。
記事の内容、市川版に関してはその内容に間違いはないのですが、原作に関してです。
今、私は獄門島を読み直しています。まだ序盤ですが、原作では千万太の公報が入ってから第一の殺人が行われます。私も今回読み直すまで完全に忘れてました。
この展開は市川版独自のものということです。微笑んだのは監督の方。う〜ん、やるな市川崑!
イエローストーン
2007/05/05 15:15
上記コメントに対して、またまた訂正です。
原作を今、読み終えましたが、やはり、犯人は船の上で3つの条件がそろったことに衝撃をうけ、嘉右衛門の執念の恐ろしさを感じ、犯行を決意する。市川版と違い原作では千万太の戦死の公報が入ってから第一の殺人が行われますが、それは結局、確認というかきっかけにすぎなかったのです。市川版をそれを鮮明に描いたのでしょう。
う〜ん、やはり恐るべしは、横溝正史・・・。
イエローストーン
2007/05/10 16:34

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