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zoom RSS 「犬神家の一族」 松子未亡人の復讐・・・

<<   作成日時 : 2012/02/23 16:31   >>

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犬神三姉妹の長女、松子未亡人。


彼女は何故復員の迎えにいった際、静馬を自身の息子・佐清と間違ってしまったのか。

佐清と静馬は共に佐兵衛の美貌と性格をおおきく受け継いでいた。そして静馬は戦場で顔に大きな怪我をおっており、識別が不可能であった。

それにしても、最愛の一人息子を間違えるだろうか。


普通ではありえないであろう。


だが、松子未亡人は普通ではなかった。


それは、結局は、
私はやはり、佐兵衛翁の怨念、正確にはあまりにも大きな想念の中にすでにあったのだと想う。
つまり、すでにみえない力がはたらいていたのである・・・・・。





松子未亡人の長男、ひとり息子の佐清は戦争にとられていた。
そんな中、佐兵衛翁はその生涯を終える。犬神財閥の莫大なる財産と事業の相続、その行方は佐兵衛翁の遺言状になかにあった。
そして、その遺言状は佐清がもどらなければ開封されない。

松子未亡人は焦った。
開封されないこともそうだが、佐清が亡きものとなっていれば、おそらく財産はふたりの妹のものとなってしまう。
遺言状には何とかかれているのか。

中身が気になり仕方がない松子は、遺言状を保管している犬神家の顧問弁護士・古館の部下である若林を買収し遺言状の中身を知る。
松子の衝撃ははかりしれないものであったであろう。
珠世の正体を知らない松子は、つまり佐兵衛翁の想念に気づかない松子は、佐兵衛翁の想念の一部である怨念だけを大きく感じとった。なんという私たち三姉妹への仕打ちであろうかと・・・・・。

そして、内容を知る前よりもより大きな焦りを感じ、そして強大なる恐怖と怒りを感じた。

松子とってはその状況は最悪であった。
このまま佐清が戻らなければ、全財産・全事業は野々村珠世のものに、佐兵衛翁の恩人である野々宮家の孫に独り占めされてしまう。いや、松子はおそらくだが、珠世と佐清が相思相愛であったことは同居していたことからも、自身の息子であることからも気づいていたはずである。
原作ではきちんと松子未亡人の言葉がある。
>あなたがそのような無事な姿でかえてくると知っていたら、母さんはあんな馬鹿なことをするんじゃなかった。する必要のなかったのね。だって珠世さんは、きっとあなたを選ぶにちがいないんですもの。

だが佐清がいなければ、珠世は妹達の息子のどちらかと一緒になり財産は、事実上どちらかの妹のものとなる。また、珠世が相続権を失った場合でも、佐清がいなければ自身のもとへは一銭もはいらない。それどころか、一番大きな額をあの女工の息子・青沼静馬にもっていかれてしまう。

映画ではたしか、その詳細が描かれないが佐清が戻らない場合、佐清の相続分は犬神奉公会へ寄付されると遺言状に記述されている。

とにかく、松子未亡人は佐清の復員を純真な親の想い以上のものを含んで待ち望んだはずである。

そして、佐兵衛翁の遺言状は松子未亡人にある決意をさせたのである。
父の非情なまでの仕打ち、怨念への復讐を・・・・・。


ここでひとつ、想うことがある。
松子の佐兵衛翁の怨念の呪縛、見えない力は本当に遺言状の内容をしってからなのか・・・・。

松子未亡人が、遺言状の中身をしりたくておそらく若林を買収して内容をしった。そして、あまりの恐ろしい内容に不吉な予感を感じた若林が金田一耕助を呼び寄せる。
この事件は、最後に佐清が母の罪をかぶろうとする。当然、松子はその段になれば自身の犯行だと告白するであろう。だが、静馬の事後共犯の事実を知らず、死体の切断や移動は松子にはできない。戦争で一度死んだ命と、そして最後に珠世に別れを告げにゆき、犬神の家はすてろと言い放った佐清の決断も堅いはずである。警察自体も佐清を犯人とみていた。さらに時代背景もあり、到底、警察だけでは、警察の通り一遍の捜査だけでは、こうもすんなり事実解明はできなかったであろう。
堅い決意の元、珠世に別れを告げ、自ら殺人の告白状を書き、松子の身代わりになると決めた佐清。彼も全ての真実を見抜いた金田一耕助でなければ、ああも簡単に泣き崩れなかったであろう・・・。

つまり、金田一耕助がいたからこそ、真実を見抜いた彼がいたからこそ、すべての事実があきらかになり、佐清は事実通りの軽い刑となり、珠世と一緒になることができた。

遺言状の内容をしる前に、遺言状の存在自体がすでに松子未亡人を動かしていた・・・、いや・・・・・。
まあ、とにかく、松子は内容をしり、自身の感情を固めた。殺人を実行することを決意した。



その歪んだ感情が松子未亡人を正常ではなくさせ、最愛の息子を判別できなかった大きな要因となった・・・・・。
そして、その佐清の顔の怪我、その惨い顔がより松子の感情を大きく揺さぶった・・・。

この顔でも、珠世は佐清を選ぶだろうか・・・・・・・・・・
そして、仮に偽物でも構わない、このまま財産を手に入れられればとまでその歪んだ感情は・・・・・・。

事実、松子未亡人は佐清の手形合わせを一度頑なに拒んでいる。彼女の中にもひょっとして・・・という想いがあったのである。



松子婦人は、佐兵衛翁の想いどおりにはさせないと心に決めた。珠世の独り占めや、静馬には一銭も渡さない。必ず佐清と一緒にさせる。松子未亡人は珠世と佐清が相思相愛であることは分かっていた、しかし、佐清の顔、そして二人の孫の行動を考えると亡き者にするしかない。なんとしても珠世に佐清を選ばせ、全財産・事業を手に入れる。それが松子未亡人の望みであると同時に、父・佐兵衛翁への松子婦人の復讐であった。

松子はその自身の望み通り、想い通りに、実行をする。父への復讐を果たす。


が、それは復讐とはなりえなかった・・・・・・・。

復讐どころか、それは・・・・・・・・・・






自身の復讐心さえも、怨念にとりつかれたゆえであった松子、その正常でなかった彼女故、静馬らの事後処理を不思議と思いつつも、とにかく自身がやりきるまではと、佐竹・佐智を亡き者にし、珠世と佐清を一緒にさせるまではとその一心であったのであろう・・・・。そして、それが佐兵衛翁の想念そのものであったのである。





ただひとつ、これは映画では描写されない原作にあることだが、松子未亡人は唯一の父への復讐を果たす。

それは、父の想念を自らの手でなしとげてしまった松子が、その怨念から解き放たれ、犬神家の長女として望んだことであり、二人の妹を想いやったことであった。

つまり、三姉妹がその後も恨みと葛藤の歪んだ感情を持ち続けて生きてゆくことへのただ一つの緩和剤となった。

次女竹子の娘・小夜子と三女の息子・佐智はつきあっていた。そして、小夜子は佐智の子をおなかに宿していた。
松子は、その生まれてくる小夜子の子に、つまり二人の妹・竹子と梅子の孫に財産の半分を与えてくれるように、そして男の子なら事業にも参加させてくれるように珠世に願いでる。そして、その松子の願いを珠世は当然受け入れる。

珠世と佐清が一緒になり、珠世が財産を全て相続し、三姉妹にはその後、互いに憎しみと葛藤が残り続ける歪んだ感情のまま生きてゆくという自己崩壊を望んだ佐兵衛翁の想念への唯一の抵抗、松子が妹達にみせた長女としての思いやり、いや二人の憎しみと葛藤を和らげるせめてもの罪ほろぼし、そう、彼女の復讐となったのである・・・・・。





結局は、佐兵衛翁の野々宮珠世への愛ゆえに、犠牲になったといえる三姉妹。中でも長女・松子はまさしく父の想念を実現する道具となってしまった。
彼女は結局、生まれながらにして怨念の対象であり、呪縛の中で長女としての役目をおってしまった。そんな彼女に同情し、自身でけじめを、彼女の望む最期をむかえさせてやった金田一耕助。
その彼のためにも、松子未亡人の復讐と、せめてこう想いたい。

なぜなら、それが彼女の遺言となったのだから・・・・。








私はこの描写は映画でもいれてほしかったと原作を読んだ時に想ったが、やはりそれはできなかったのであろう。
私が想うに、市川版と原作では松子未亡人の印象が違う。原作のがより強い人物であると感じる。
決して誰の言うことも聞かない、珠世の正体を知っても人前で取り乱すことなどしない人物。それゆえに、原作ではあの描写が生きる。だが、市川版では・・・・。
そして、何よりも市川版では、佐兵衛翁の至上の愛を核としている。その為、佐兵衛翁の想念がすべてかなえられる描き方が最も効果的ととなる。

そう、あの金田一耕助の言葉が生きてくるのである・・・・。
















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