「獄門島」~真の恐ろしさ・・・ (追記) (一部訂正)
「獄門島」に関して今まで気にしていなかった点に目がむいた。
そのきっかけは。先日のめとろんさん同様、探偵もの(当然その他の分野にもだが)に非常に深い考察をされるブタネコさんの「●獄門島(上川版)」(http://buta-neko.com/blog/archives/2006/10/post_721.html)の記事を読んでである。
それは「謎の復員兵」に関してである。
その記事の中で、ブタネコさんは、
>原作を読んだ方ならお判りの事だが「謎の復員兵」の存在により、壊れた与三松や早苗や 間も無く復員してくるはずの一(ひとし)等が 事件全体になんらかの関わりを疑われ、謎が謎を呼ぶという ともすれば柱的エピソードのひとつなのだ。
と書かれている。
記憶が一番鮮明な市川版「獄門島」にて検証する。
おっしゃる通り、「獄門島」には謎の兵隊服の男が出現する。彼の存在は警察、実行犯、早苗を惑わせ、そして金田一の推理をも最初まどわすことになる。
重要なエピソードである。
そして、このブタネコさんの記事にコメントを寄せられた、めとろんさん。これもまた、非常に興味を引かれた内容であった。
>昔、「横溝正史読本」(角川文庫 緑三○四)を読んだとき、同書の「自作を語る」の項で、僕の大好きな箇所があったのを思い出しました。以下、抜粋ー
「小林 (前略)それで、あれ、本当は犯人は一人なわけですよね。(横溝、笑う)それがぼくは、非常にうまくできてると思います。それで、最後に、詐欺の男が来てて、犯罪そのものの動機が崩壊しちゃうでしょう。あそこがやっぱりおそろしいですね。復員詐欺で・・・。
そう「獄門島」には謎の兵隊服の男がもうひとり出現する。冒頭にひとしの復員を親切に鬼頭家へ伝えにいった男である。
「獄門島」は3つの条件がそろわなければ、殺人はおきなかった。
寺の鐘の返還
千万太の死
ひとしの生還
この3つがそろわなければ、鬼頭嘉右衛門のあさましいまでの執念も実らなかったのである。
そして、この3つは同時に揃わなければならない。いや時間差では揃うことがありえないのである。
役場にひとしの戦死公報が入ればその瞬間に成立しなくなる。
実行犯(原作では実行犯達)はこの条件が同じ日に揃ったことに、嘉右衛門の執念、人間のあさましい業に、恐怖にもにた感情を抱き決行を決意する。
つまり、“本当は犯人は一人”、そう復員詐欺がなけらば条件はそろわなかった。詐欺の判明で動機が崩壊する。彼の存在自体が事件の幕開け。まさにミステリーの醍醐味。
島に何の関係もない、本鬼頭と分鬼頭の争いなど微塵も知らない人物によって、この殺人事件は引き金を引かれる。
ミステリーの恐ろしさを感じる。
しかし、その意味での犯人は一人か?
本当にミステリーの醍醐味、恐ろしさは・・・・(私の考え過ぎか・・・)
3つの条件は上記のように、同時でなくては存在(わずかな猶予はあろうが)しない。
市川版で検証しているのだが、実行犯は同じに揃ったことに一番、衝撃を受け、突き動かされる。
もう一人いる。条件をそろえた人間が。
復員詐欺と顔を合わせ、釣り鐘と共に島に渡り、千万太の戦死を報告した男。
千万太の妹達を助けてくれと頼まれ、彼でなくては真相はつかめなかったであろうその張本人、金田一耕助・・・・
皮肉で非情なまでの運命の、時のいたずらである。
金田一耕助が島を訪れた日、それが事件の動機を強固なものにし、幕開けを早めた。
のちに千万太の戦死公報がはいった。しかしその時既に第一の凶行は行われていた。そして、全てが終わり、金田一が真相を明らかにした時、ひとしの戦死公報が入る。
なんという・・・、言葉がみつからない、「獄門島」、横溝正史・・・
※本記事は原作の詳細を忘れている私が、あくまでも市川版を元に検証し、記述したものです。
※一部、原作の設定と混乱している記述がありましたので、一部訂正しました。
※原作を読み直しての「獄門島」についての最新の記事は、こちら
『「獄門島」(’77 東宝) 正に市川崑 の金田一耕助 』
(http://toridestory.at.webry.info/200705/article_9.html)
獄門島
そのきっかけは。先日のめとろんさん同様、探偵もの(当然その他の分野にもだが)に非常に深い考察をされるブタネコさんの「●獄門島(上川版)」(http://buta-neko.com/blog/archives/2006/10/post_721.html)の記事を読んでである。
それは「謎の復員兵」に関してである。
その記事の中で、ブタネコさんは、
>原作を読んだ方ならお判りの事だが「謎の復員兵」の存在により、壊れた与三松や早苗や 間も無く復員してくるはずの一(ひとし)等が 事件全体になんらかの関わりを疑われ、謎が謎を呼ぶという ともすれば柱的エピソードのひとつなのだ。
と書かれている。
記憶が一番鮮明な市川版「獄門島」にて検証する。
おっしゃる通り、「獄門島」には謎の兵隊服の男が出現する。彼の存在は警察、実行犯、早苗を惑わせ、そして金田一の推理をも最初まどわすことになる。
重要なエピソードである。
そして、このブタネコさんの記事にコメントを寄せられた、めとろんさん。これもまた、非常に興味を引かれた内容であった。
>昔、「横溝正史読本」(角川文庫 緑三○四)を読んだとき、同書の「自作を語る」の項で、僕の大好きな箇所があったのを思い出しました。以下、抜粋ー
「小林 (前略)それで、あれ、本当は犯人は一人なわけですよね。(横溝、笑う)それがぼくは、非常にうまくできてると思います。それで、最後に、詐欺の男が来てて、犯罪そのものの動機が崩壊しちゃうでしょう。あそこがやっぱりおそろしいですね。復員詐欺で・・・。
そう「獄門島」には謎の兵隊服の男がもうひとり出現する。冒頭にひとしの復員を親切に鬼頭家へ伝えにいった男である。
「獄門島」は3つの条件がそろわなければ、殺人はおきなかった。
寺の鐘の返還
千万太の死
ひとしの生還
この3つがそろわなければ、鬼頭嘉右衛門のあさましいまでの執念も実らなかったのである。
そして、この3つは同時に揃わなければならない。いや時間差では揃うことがありえないのである。
役場にひとしの戦死公報が入ればその瞬間に成立しなくなる。
実行犯(原作では実行犯達)はこの条件が同じ日に揃ったことに、嘉右衛門の執念、人間のあさましい業に、恐怖にもにた感情を抱き決行を決意する。
つまり、“本当は犯人は一人”、そう復員詐欺がなけらば条件はそろわなかった。詐欺の判明で動機が崩壊する。彼の存在自体が事件の幕開け。まさにミステリーの醍醐味。
島に何の関係もない、本鬼頭と分鬼頭の争いなど微塵も知らない人物によって、この殺人事件は引き金を引かれる。
ミステリーの恐ろしさを感じる。
しかし、その意味での犯人は一人か?
本当にミステリーの醍醐味、恐ろしさは・・・・(私の考え過ぎか・・・)
3つの条件は上記のように、同時でなくては存在(わずかな猶予はあろうが)しない。
市川版で検証しているのだが、実行犯は同じに揃ったことに一番、衝撃を受け、突き動かされる。
もう一人いる。条件をそろえた人間が。
復員詐欺と顔を合わせ、釣り鐘と共に島に渡り、千万太の戦死を報告した男。
千万太の妹達を助けてくれと頼まれ、彼でなくては真相はつかめなかったであろうその張本人、金田一耕助・・・・
皮肉で非情なまでの運命の、時のいたずらである。
金田一耕助が島を訪れた日、それが事件の動機を強固なものにし、幕開けを早めた。
のちに千万太の戦死公報がはいった。しかしその時既に第一の凶行は行われていた。そして、全てが終わり、金田一が真相を明らかにした時、ひとしの戦死公報が入る。
なんという・・・、言葉がみつからない、「獄門島」、横溝正史・・・
※本記事は原作の詳細を忘れている私が、あくまでも市川版を元に検証し、記述したものです。
※一部、原作の設定と混乱している記述がありましたので、一部訂正しました。
※原作を読み直しての「獄門島」についての最新の記事は、こちら
『「獄門島」(’77 東宝) 正に市川崑 の金田一耕助 』
(http://toridestory.at.webry.info/200705/article_9.html)
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