「ゲッタウェイ」 マックィーンが魅せる、ガンアクションの傑作

「ゲッタウェイ」、これも何年ぶりだろう、7,8年ぶりに、そして何回目だろう・・・、5回目位かな、鑑賞した。


「ゲッタウェイ」   1972年 アメリカ

監督 サム・ペキンパー
脚本 ウォルター・ヒル
音楽 クィンシー・ジョーンズ 

主演 スティーヴ・マックィーン


まず全編、非常に乾いた画という印象をうける。

冒頭のクレジットの出し方、そのストップモーションがなかなかいい。刑務所内の生活の細かいカット割り、その時間軸を交錯させるカットも非常に有効。
さらには、音の使い方。最初のドク・マッコイが仮釈放を却下された後、刑務所内の縫い物だろうか、その機械の作業音が鑑ている側の耳にさわる。これがマッコイのイライラと怒りをつよく感じる。そして、途中、駅でロッカーのカギをすり替えられ金を盗まれたシーン。その後、マッコイとキャロルが駅舎の待合いロビー内で犯人を捜す。この時、ロビー内の赤ん坊の泣き声と駅アナウンスが大きく響きわたる。これも非常に耳にさわり、不快な感じを受ける。これがキャロルの心の動揺とマッコイのイライラをあらわしているのだろう。

とにかく、マッコイは最後まで心休まる暇がないように、終始不安定な感情であるように感じる。
最初は仮釈放を取り下げられ、そして出所後、一瞬はその開放感というか、自由を身体全身で感じる。それが公園かな、あの水に飛び込むシーンに表れている。
しかし、夜はすぐに妻に、その状況にもなじめない。その後は強盗の全体の主導権、そして実行時の仲間のミス、そして仲間の裏切り。さらには妻、キャロルの不貞の発覚。
とにかく、終始不安というか、重苦しいトーンの中話が進む。
マッコイ夫妻の揺れるその間柄、その互いのわだかまり、これが駅での金のシーンが象徴しているように感じる。

この重い、揺れる2人の関係とさらにいえばマッコイと対照的なのが、マッコイを追う裏切り者のルディ、そして途中から即席のカップルになるルディカップルである。
マッコイは非常にキレるが神経質で非常に繊細な面がある。それに反して、欲と感情をむき出したような大雑把な男、ルディ。
この交互の描写がとても面白い。

そして、逃亡中にある街で通報されたマッコイが12番のショットガンを手にした時から、はげしい銃撃が始まる。

マッコイが、マックィーンがとにかくカッコいい。
非常にキレ、瞬時の判断力、そして寡黙ながらとにかく行動力がある。そして神経質で繊細な面をもちつつも冷静ありながらも激しい、大胆な行動を取る。このキャラはたまらない。
その彼が駅での窃盗犯をおいかけ、金を取り戻したあとの黒人の子供とのシーンは非常におかしい。それとキャロルのせいで一度コケルシーン。

繰り返すがとにかくマッコイはキレて、カッコいい。
強盗の後、仲間との落ち合う場所でルディがマッコイを殺そうと銃をかくしもって待ちかまえている。マッコイがくる。
マッコイ、
『ジャクソンは?』
ルディ
『死んだよ。おまえもな。』
といって、後ろ手にかくしもっていた銃でマッコイを撃とうとする。
それより先に無言でマッコイはルディに45ガバの引き金を引く。
後半、ショットガンを撃ちまくるマックィーンも非常に板について、シビレます。

そして、当然ペキンパーの演出が冴える。
特にアクションシーンでの、細かなカット割り、ハイスピードでの画、その構成はすばらしい。まさに私の好み。
ときおり挟む遠目のショットのいい。

ペキンパーはマックィーンと組むことを待ち望んでいた。
以前、「シンシナティ・キッド」で一度組むが、製作側とケンカをして、ペキンパーは途中で降りてしまう。その別れ際、彼はマックィーンに、
『君とは是非もう一度やりたい。』
と言い残した。
そして、この年、1972年に「ジュニア・ボナー」で再会をはたし、同年につづけて本作を撮った。
本も当初は原作者ジム・トンプスン自身が担当していたようだが、マックィーンが脚本の結末を気に入らなかったことからウォルター・ヒルになった。さらには、音楽もペキンパー作品の常連ジェリー・フィールディングが担当する予定だったが、これまたマックィーンの主張でクインシー・ジョーンズになったそうだ。
もともとマックィーンは脚本を選ぶのとギャラが高い。そのせいで出演作品が少ない。
しかし、この作品は先に撮った『ジュニア・ボナー』(これも先にこっちを撮ったあたりは、非常に彼ららしいと思う。西部への哀愁をこめた作品で、ペキンパー作品で唯一、死体と銃がでない作品  http://toridestory.at.webry.info/200608/article_67.html)と違い、待望のアクション映画なので、違う意味で2人ともその力のいれようは深かったのではないだろうか。

出所後、水に飛び込んだ2人はずぶ濡れで家に帰る。
キャロルが、
『夕食は?』
と尋ねると、
『酒だ。ウイスキー、ウイスキー、ウイスキー。』
とマッコイ。そして妻がもってきたウイスキーの中から彼が手にとる1本が、アメリカ人が呼ぶところのオースニン・ニコルズ、ワイルド・ターキーである。これがこの荒々しいバーボンを選ぶところが非常に彼らしい。これぞドク・マッコイ。


アクションの山場、ホテルのシーン。
ゴミの山の中で、仲をとりもどしたマッコイ夫妻。ホテルの部屋でようやく、ふっきれた思いで、真のひとときの安らぎの時をと、思った瞬間にマッコイはあることに気づく。ロビーでホテルの主人からマッコイの部屋を聞き出すベニヨン一味。そこへマッコイ夫妻が階段をおりてくる。むきあう両者。その間がいい。
そして最後の激しい銃撃戦へ・・・。
ここもその画、ほんとにカット割りとハイスピードカメラでの映像及び、廊下の遠目のショット等、秀逸である。大変私の好み。ここだけでもガン・アクションの傑作といえよう。
全く役柄、タイプの違う作品だが、全体的な作品、画としての、編集、カット割り、アングル、撮り方などは「ブリット」のが優るし、比べるとそちらの画のが私の好みであるし、作品自体もそちらのが好きだが、この強盗犯のキレ者で、激しいキャラもいいし、このペキンパー演出も私は好きである。
そして、なによりもマックィーン、まぁこの後、実際に2番目の妻となるアリ・マッグロウーとの共演で、彼女もいいのではあるが、やはりマックィーンにつきる作品。あのショットガンさばきもいいし、ガバもよく似合う。行動、その表情をみているだけでたまらない。
のちにリメイクされるが、誰?なんとかボールドウィンとカミさん?あの甘っちょろい顔でドク・マッコイ?冗談でしょ。

全体的にも、まぁ、最初の事件前の展開がタルイ部分があるが、マッコイ夫妻の私が感じるところのその微妙な重苦しいトーン、これが緊張感となり、ルディバカップルの対比ですすんでいく構成はけっこういいと感じる。

しかし、私の悪いクセで、以前邦画「悪魔の手毬唄」などでもそうであったが、石坂浩二演じる金田一耕助ばかり、いやそれだけみている。これもそう、いろいろみているようで、結局マックィーン、ドク・マッコイばかりみているのである・・・。


そしてあのラスト。
あのトラックのじいさんが非常にいい。とてもとぼけた味で、しかもいい根性をしている。
車の中で、マッコイ夫妻に
『小金があれば、家を買い、子供を育てるといい』と言う。
マッコイは妻を抱き寄せる。
そして、金をはらいトラックを手にいれる。

淀川長治氏は、長い直線の道を進んでいく車のバック、けっして2人の顔をうつさない。これが2人の行く末の暗さを暗示している。所詮、犯罪は割に合わないもの。
という旨の解説をしておられた。

私もひとときは落ち着き、安らぐだろうが、いづれはまた・・・、との思いを感じる。
あのドク・マッコイである限り・・・・・。


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マックィーンはこの後、’73年に「パピヨン」、’74年に「タワーリング・インフェルノ」主演後、興業的に大失敗の78年の「民衆の敵」まで4年もスクリーンから遠ざかってしまう。

諸事情あったのだろうが、年齢的にもいい時期だけに非常に残念である。



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