「華麗なる賭け」~そのクールな眼差しの奥にみえるのは・・・
久しぶりに「華麗なる賭け」、つまりオリジナルの「トーマス・クラウン・アフェア」を鑑賞した。
「華麗なる賭け」 1968年 アメリカ
原題 THE THOMAS CROWN AFFAIR
監督 ノーマン・ジェイソン
製作 ノーマン・ジェイソン
主演 スティーヴ・マックィーン
出演 フェイ・ダナウェイ
ノーマン・ジェイスンの演出がいい。
ノーマン・ジェイソンとマックィーンが組むのは「シンシナティ」以来2度目。前回はペキンパーがおりた後に彼がつき、作品を仕上げた。
「シンシナティ・キッド」は久しく鑑ていないので詳細、覚えてないが、私はこの作品のが好きかな。テンポもよく、演出を冴える。
“風のささやき”がまたいい。やはり名曲ですね。
そして、何よりマックィーンが断然いい!
画はけっこう凝ってますね。マルチを多用し、ときおりハイスピードでも撮っています。
私の好みとして、出だし、いきなり歌そして、ストーリーの流れと無関係なバック、これはあまり好きではないのですが(個人的には「ブリット」のようなタイトルバックが好きなのですが)、肝心のストーリーの始まりはいいのではないでしょうか。
所謂つかみはOK。
共犯者5人とクラウンをマルチで描くことは大変効果的で、妙に緊迫感、緊張感そして、こちらとしても高揚感さえ感じ、まさにその画に引き込みます。
とにかくクラウン氏、マックィーンがとにかく、オシャレでスマートでカッコイイ!
子供のような、強気で熱くなる部分もあるが、重大な、肝心な点においては非常にクール。
すでに事業が成功し、多額の財産をもつトーマス・クラウン。満ち足りた安定した生活の中、スリルを、刺激を求めてゲームとして銀行強盗を楽しむ。そして目的はあくまで勝つ為に・・・。
クールな表情で指示をだすクラウン、家に金を持ち帰り、1人笑い声をあげる画が非常に印象的である。
そして、何よりキレる。
相手、つまりフェイ・ダナウェイ演じるビッキーも非常にキレる女だが、クラウンはその上をいく。
何者か不明だが自分に興味をもつ女としり、声をかけるクラウン。まぁ、ビッキーがそう仕向けのだが。
そして、スバリ直球勝負でしかけるビッキーに、決して動じないクラウン。
いきなりの“犯人の目星はあなたよ”
にも。
マックィーンのこういうオシャレな雰囲気も非常にいいですね。それは作品全体にもいえますが、まさしく華麗で、そしてなによりクールな表情がたまりません。
やはりリメイク、ピアースは好きな役者ですが、この作品には甘過ぎますね。まぁリメイクは作品自体も甘く仕上げており、あれだけ鑑る分には楽しめますが、やはり比べるとね、私はマックィーン、そしてこのオリジナルの作風、ラストが好きです。
ただ、この時代の流行なのか、スーツのパンツの丈が短いのが非常に気になります。
互いにキレる2人。この駆け引き、やりとりが面白いのだが、ビッキーは仕事の為、クラウンはゲーム。この入り方が決定的に違う。
そして、話は画的にはビッキーペースですすんでゆく。
クラウンの自宅の夜、あのチェスをやる場面。あの演出、ショットも非常にいいのだが、その前のセリフが印象的。
チェスの横にいき、それを見つめるビッキー。その彼女にクラウンが、
“Do you play?”
“Try me”
と返す。
ビッキーがクラウンにまさにゲームをしかけたのである。
そして、チェスがはじまる。この時の構成、構図、ショットがいい。
次々にしかけるビッキー、そしてそれにとまどい、困惑し、集中ときらしていゆくトーマス。その仕草、表情が非常によく伝わる。
そして、チェスに、ビッキーに負けたクラウンはまさしくビッキーのセリフ通りの行動を・・・・。
翌日、警察でビッキーは落としたと喜びをあらわにする。
“とうとうやったわ”
このチェス、本当にクラウンは負けたのだろうか・・・。
ビッキーと相対し、興味をもち、素直に負けを認め、その夜を楽しんだのかもしれない。
しかし・・・、私はその前、警察でビッキーと待ち合わせたシーン、その時のあるセリフが頭にやきついている。
冒頭で出てくる強盗の手下の1人と鉢合わせさせるが、クラウンは全く動じず、ボロをださない。ビッキーが彼の手強さを思い知るシーン。そして仕事とは思いながらも彼に興味をもつ・・・。その時のエレベーターを待つ2人の沈黙。これが強烈な緊張感を伝えてくる。
そしてそのあとにビッキーのセリフ、
“Like a ice”
これが非常に印象的であり、私につきささる・・・。
この映画、ロマンテックに感じる人もいるようだが、私は全くそうは感じない。たしかに“風のささやき”が流れ、クラウンとビッキーが共にするシーン、バギーや市場で買い物するシーンはそのような描写だが、それ以外は私は常に駆け引きを感じる。そして非常にクラウンのクールな眼差し、表情が非常につよく印象に残る。
そして後半の非常にテンポのよい展開も含め、演出的効果として、わざと、つまりフリにとれる。
初見ならばもしかしたらこう思わないかもしれない、しかし今さらである。もう何度も鑑賞している作品。先がよめているだけにその思いは余計に強い。
オフィスからビッキーに張り込みに気づいていることを明かすシーンなども計算づくで、追いつめられているとの印象をもたすが、張り込み刑事にやり返したりと楽しんでおり、別の女の存在を明らかにするなど着々とクラウンもしかける。
彼は思ったであろう。浜辺のテラスでビッキーが
“別の女性を連れてきたことあるの?”
と尋ねたとき、勝ったと。
彼女はやがて彼の心配をし始める。そして警察と取引すればとも持ちかける。しかし、警察は取引は絶対にしないと答えた。
ある夜、クラウンはベッドでビッキーに言う。もう追いつめられたよ、こうなったら、もう一度やってやると、私の葬式だと、そして最後の仕掛けを放つ。
クラウンは、最初に“目星はあなたよ“といわれた段階で、この女は非常にキレると、そしてその後の会話、そして夜、刑事が自宅に張り込んでいることに気づき、このままでは刑務所行きかもしれないと判断し、会社の引退を決め、最後の賭け、つまりゲームにでたのである。
その時のクラウンとビッキーの会話もいい。
“欺しあいも悪くない。 俺の首は・・・”
“とれると思うわよ”
ただ、クラウンは全くビッキーに想いをはせなかったのか・・・。
そうではない。彼はキレ者のビッキーに興味を持ったはずである。それがやがて・・・、彼がひとり海辺でバギーにのり、海をみつめるシーン。そこに彼の彼女への想いが、揺れる気持ちが、しかし、ゲームには負けないという最後の決断があるように感じる・・・。
そしてビッキーは仕事の為に仕掛け、近づいたのだが、次第に彼に・・・・。仕事との狭間にゆれながらも彼に惚れてしまい、これが判断を狂わせた。
しかし、別の深い、ロマンティックな読みをすれば、クラウンこそ本当にビッキーを愛したのかもしれない。そして深く想ったからこそ、真の彼女をみることができた。それは彼女は仕事を優先させる。そしてビッキーは仕事と彼への想いの狭間で揺れた。その為に、愛におぼれ、それは愛にはまったわけではなく、おぼれた故に、深くはいりこめなかった。真のトーマス・クラウンをみることが出来なくなっていた・・・。
こうとることもできなくはないが・・・。
しかし、しかし、やはり、この画からは私はそうとは思えない・・・。
ビッキーはひとり、仕事とクラウン、その狭間で揺れ、苦悩を抱えながらもやはり愛よりも仕事をやりとげようとする。そして、彼と待ち合わせた墓地に刑事たちとまちぶせする。
この強盗シーンから墓場まで、最初と最後が基本的に同じ画で展開される。そしてロールスのエンブレムのショット。これは非常にいい。同じ画がとても生きる。
ビッキーはこないでほしいと願っていた。
刑事たちには
“来るわ”
といいつつも、来てはいけない。来るはずはないと。
そこへクラウンのロールスが入ってくる。
彼女は険しい表情で運転席に近づき、
“自分の葬式のつもりなの”
そう言って車のドアを開ける。
しかし、そこには若い別の男が・・・。
“ビッキーさん?あなたに伝言です”
驚きの、つよいショックの表情を浮かべるビッキー。
その時既にクラウンは機上の人となっていた・・・・。
その若い男から伝言をわたされたビッキー。
そこには
“早く発った。
金をもってきてくれるか、それか、そこに残るかだ。愛するトミーより”
仕事の為には違法な手段をも容赦なく使うビッキー、そんな彼女を見抜いていたクラウン。ビッキーはゲームに敗れ、結局愛にも敗れた・・・・。
ビッキーは涙をうかべながらも一瞬笑みをうかべる・・・。
そして伝言を破りすて、顔を手でおおう・・・。
このときのビッキーの思いは・・・。
まず彼女はクラウンでないことに驚き、衝撃をうける。
そして、伝言を読み、安心すると同時にそれを上回る感情で“やられた”と思ったのでは。
結局、彼女は揺れる想いの中、迷いがありクラウンを深くみれず、完全には信じられなかった。
強盗をする前の晩のクラウンと彼女のやりとりの中で、
“こういう形で私を試さないで”
“愛してないならそう言って”
と彼女は言う・・・。
“出来るわけないのは知っているでしょ。 嘘ばっかり・・・”
伝言をみて彼女はこう思ったのではないだろうか。
トーマス・クラウン、彼はビッキーが本当に自分を疑っていると知ったとき、彼女がキレると見抜き、手強いと感じた。と同時に興味を持ち、最高の対戦相手だとおもったのではないだろうか。そこで仕事の引退を決め、その仕掛けにはいっていった。最後のゲームの・・・。
そして、その途中、意に反して彼女に惹かれたのでは・・・。
機上の人となったクラウン。
最後の彼の表情、非常に微妙な描写であるが、深く目を閉じ、そして静かに目を開く彼。そしてうっすら笑みを浮かべる。
私は心に何か残しつつも、ゲームにはクールに勝ったトーマス・クラウンの喜びの笑みに見える・・・・。
そのクールな眼差しの奥に彼がみたもの、それは・・・、ゲームの勝利・・・。
「華麗なる賭け」 1968年 アメリカ
原題 THE THOMAS CROWN AFFAIR
監督 ノーマン・ジェイソン
製作 ノーマン・ジェイソン
主演 スティーヴ・マックィーン
出演 フェイ・ダナウェイ
ノーマン・ジェイスンの演出がいい。
ノーマン・ジェイソンとマックィーンが組むのは「シンシナティ」以来2度目。前回はペキンパーがおりた後に彼がつき、作品を仕上げた。
「シンシナティ・キッド」は久しく鑑ていないので詳細、覚えてないが、私はこの作品のが好きかな。テンポもよく、演出を冴える。
“風のささやき”がまたいい。やはり名曲ですね。
そして、何よりマックィーンが断然いい!
画はけっこう凝ってますね。マルチを多用し、ときおりハイスピードでも撮っています。
私の好みとして、出だし、いきなり歌そして、ストーリーの流れと無関係なバック、これはあまり好きではないのですが(個人的には「ブリット」のようなタイトルバックが好きなのですが)、肝心のストーリーの始まりはいいのではないでしょうか。
所謂つかみはOK。
共犯者5人とクラウンをマルチで描くことは大変効果的で、妙に緊迫感、緊張感そして、こちらとしても高揚感さえ感じ、まさにその画に引き込みます。
とにかくクラウン氏、マックィーンがとにかく、オシャレでスマートでカッコイイ!
子供のような、強気で熱くなる部分もあるが、重大な、肝心な点においては非常にクール。
すでに事業が成功し、多額の財産をもつトーマス・クラウン。満ち足りた安定した生活の中、スリルを、刺激を求めてゲームとして銀行強盗を楽しむ。そして目的はあくまで勝つ為に・・・。
クールな表情で指示をだすクラウン、家に金を持ち帰り、1人笑い声をあげる画が非常に印象的である。
そして、何よりキレる。
相手、つまりフェイ・ダナウェイ演じるビッキーも非常にキレる女だが、クラウンはその上をいく。
何者か不明だが自分に興味をもつ女としり、声をかけるクラウン。まぁ、ビッキーがそう仕向けのだが。
そして、スバリ直球勝負でしかけるビッキーに、決して動じないクラウン。
いきなりの“犯人の目星はあなたよ”
にも。
マックィーンのこういうオシャレな雰囲気も非常にいいですね。それは作品全体にもいえますが、まさしく華麗で、そしてなによりクールな表情がたまりません。
やはりリメイク、ピアースは好きな役者ですが、この作品には甘過ぎますね。まぁリメイクは作品自体も甘く仕上げており、あれだけ鑑る分には楽しめますが、やはり比べるとね、私はマックィーン、そしてこのオリジナルの作風、ラストが好きです。
ただ、この時代の流行なのか、スーツのパンツの丈が短いのが非常に気になります。
互いにキレる2人。この駆け引き、やりとりが面白いのだが、ビッキーは仕事の為、クラウンはゲーム。この入り方が決定的に違う。
そして、話は画的にはビッキーペースですすんでゆく。
クラウンの自宅の夜、あのチェスをやる場面。あの演出、ショットも非常にいいのだが、その前のセリフが印象的。
チェスの横にいき、それを見つめるビッキー。その彼女にクラウンが、
“Do you play?”
“Try me”
と返す。
ビッキーがクラウンにまさにゲームをしかけたのである。
そして、チェスがはじまる。この時の構成、構図、ショットがいい。
次々にしかけるビッキー、そしてそれにとまどい、困惑し、集中ときらしていゆくトーマス。その仕草、表情が非常によく伝わる。
そして、チェスに、ビッキーに負けたクラウンはまさしくビッキーのセリフ通りの行動を・・・・。
翌日、警察でビッキーは落としたと喜びをあらわにする。
“とうとうやったわ”
このチェス、本当にクラウンは負けたのだろうか・・・。
ビッキーと相対し、興味をもち、素直に負けを認め、その夜を楽しんだのかもしれない。
しかし・・・、私はその前、警察でビッキーと待ち合わせたシーン、その時のあるセリフが頭にやきついている。
冒頭で出てくる強盗の手下の1人と鉢合わせさせるが、クラウンは全く動じず、ボロをださない。ビッキーが彼の手強さを思い知るシーン。そして仕事とは思いながらも彼に興味をもつ・・・。その時のエレベーターを待つ2人の沈黙。これが強烈な緊張感を伝えてくる。
そしてそのあとにビッキーのセリフ、
“Like a ice”
これが非常に印象的であり、私につきささる・・・。
この映画、ロマンテックに感じる人もいるようだが、私は全くそうは感じない。たしかに“風のささやき”が流れ、クラウンとビッキーが共にするシーン、バギーや市場で買い物するシーンはそのような描写だが、それ以外は私は常に駆け引きを感じる。そして非常にクラウンのクールな眼差し、表情が非常につよく印象に残る。
そして後半の非常にテンポのよい展開も含め、演出的効果として、わざと、つまりフリにとれる。
初見ならばもしかしたらこう思わないかもしれない、しかし今さらである。もう何度も鑑賞している作品。先がよめているだけにその思いは余計に強い。
オフィスからビッキーに張り込みに気づいていることを明かすシーンなども計算づくで、追いつめられているとの印象をもたすが、張り込み刑事にやり返したりと楽しんでおり、別の女の存在を明らかにするなど着々とクラウンもしかける。
彼は思ったであろう。浜辺のテラスでビッキーが
“別の女性を連れてきたことあるの?”
と尋ねたとき、勝ったと。
彼女はやがて彼の心配をし始める。そして警察と取引すればとも持ちかける。しかし、警察は取引は絶対にしないと答えた。
ある夜、クラウンはベッドでビッキーに言う。もう追いつめられたよ、こうなったら、もう一度やってやると、私の葬式だと、そして最後の仕掛けを放つ。
クラウンは、最初に“目星はあなたよ“といわれた段階で、この女は非常にキレると、そしてその後の会話、そして夜、刑事が自宅に張り込んでいることに気づき、このままでは刑務所行きかもしれないと判断し、会社の引退を決め、最後の賭け、つまりゲームにでたのである。
その時のクラウンとビッキーの会話もいい。
“欺しあいも悪くない。 俺の首は・・・”
“とれると思うわよ”
ただ、クラウンは全くビッキーに想いをはせなかったのか・・・。
そうではない。彼はキレ者のビッキーに興味を持ったはずである。それがやがて・・・、彼がひとり海辺でバギーにのり、海をみつめるシーン。そこに彼の彼女への想いが、揺れる気持ちが、しかし、ゲームには負けないという最後の決断があるように感じる・・・。
そしてビッキーは仕事の為に仕掛け、近づいたのだが、次第に彼に・・・・。仕事との狭間にゆれながらも彼に惚れてしまい、これが判断を狂わせた。
しかし、別の深い、ロマンティックな読みをすれば、クラウンこそ本当にビッキーを愛したのかもしれない。そして深く想ったからこそ、真の彼女をみることができた。それは彼女は仕事を優先させる。そしてビッキーは仕事と彼への想いの狭間で揺れた。その為に、愛におぼれ、それは愛にはまったわけではなく、おぼれた故に、深くはいりこめなかった。真のトーマス・クラウンをみることが出来なくなっていた・・・。
こうとることもできなくはないが・・・。
しかし、しかし、やはり、この画からは私はそうとは思えない・・・。
ビッキーはひとり、仕事とクラウン、その狭間で揺れ、苦悩を抱えながらもやはり愛よりも仕事をやりとげようとする。そして、彼と待ち合わせた墓地に刑事たちとまちぶせする。
この強盗シーンから墓場まで、最初と最後が基本的に同じ画で展開される。そしてロールスのエンブレムのショット。これは非常にいい。同じ画がとても生きる。
ビッキーはこないでほしいと願っていた。
刑事たちには
“来るわ”
といいつつも、来てはいけない。来るはずはないと。
そこへクラウンのロールスが入ってくる。
彼女は険しい表情で運転席に近づき、
“自分の葬式のつもりなの”
そう言って車のドアを開ける。
しかし、そこには若い別の男が・・・。
“ビッキーさん?あなたに伝言です”
驚きの、つよいショックの表情を浮かべるビッキー。
その時既にクラウンは機上の人となっていた・・・・。
その若い男から伝言をわたされたビッキー。
そこには
“早く発った。
金をもってきてくれるか、それか、そこに残るかだ。愛するトミーより”
仕事の為には違法な手段をも容赦なく使うビッキー、そんな彼女を見抜いていたクラウン。ビッキーはゲームに敗れ、結局愛にも敗れた・・・・。
ビッキーは涙をうかべながらも一瞬笑みをうかべる・・・。
そして伝言を破りすて、顔を手でおおう・・・。
このときのビッキーの思いは・・・。
まず彼女はクラウンでないことに驚き、衝撃をうける。
そして、伝言を読み、安心すると同時にそれを上回る感情で“やられた”と思ったのでは。
結局、彼女は揺れる想いの中、迷いがありクラウンを深くみれず、完全には信じられなかった。
強盗をする前の晩のクラウンと彼女のやりとりの中で、
“こういう形で私を試さないで”
“愛してないならそう言って”
と彼女は言う・・・。
“出来るわけないのは知っているでしょ。 嘘ばっかり・・・”
伝言をみて彼女はこう思ったのではないだろうか。
トーマス・クラウン、彼はビッキーが本当に自分を疑っていると知ったとき、彼女がキレると見抜き、手強いと感じた。と同時に興味を持ち、最高の対戦相手だとおもったのではないだろうか。そこで仕事の引退を決め、その仕掛けにはいっていった。最後のゲームの・・・。
そして、その途中、意に反して彼女に惹かれたのでは・・・。
機上の人となったクラウン。
最後の彼の表情、非常に微妙な描写であるが、深く目を閉じ、そして静かに目を開く彼。そしてうっすら笑みを浮かべる。
私は心に何か残しつつも、ゲームにはクールに勝ったトーマス・クラウンの喜びの笑みに見える・・・・。
そのクールな眼差しの奥に彼がみたもの、それは・・・、ゲームの勝利・・・。