「ジャックナイフ」 ~ボビーは彼をそう呼んだ・・・

マス釣りの解禁日、早朝にもかかわらずメグスは突然デビットの家を訪ねた。釣りに誘う為に。

デビットはベトナムの戦友で、今は妹と2人実家で暮らしていた。

ハイスクール時代、運動神経抜群で学校の英雄だったデビット。そんな彼を同じく戦友のボビーは“ハイスクール”と呼んでいた。
メグス、ボビー、デビットの3人は仲がよかった。いつも一緒の3人組だった。
頭のいいボビー、陽気でイカレ野郎のメグス、そして臆病もののデビット・・・。

メグスはトラックを猛スピードで走らせてはよく急停止(ジャックナイフ)させた。そこでボビーは彼を“ジャックナイフ”と呼んだ。

そんな仲良し3人組もいまはひとり欠けていた。ボビーは戦死したのである。
彼らの目の前で・・・。

戦争の傷跡を深く心に残している男たち、そしてそこに絡む平凡以下の人生を送る心寂しい女。それぞれの影を引きずる大人たちを3人の演技派俳優が見事に演じている。



「ジャックナイフ」   1989年  アメリカ

監督 デビット・ジョーンズ

原作・脚本 スティーブン・メトカルフェ

主演 ロバート・デ・ニーロ
出演 エド・ハリス キャシー・ベイカー


この作品の記事を書くのも2度目(http://toridestory.at.webry.info/200608/article_70.html)。おきにいりの作品である。今回、久々に鑑賞した。


帰還以後、デビットは毎日酒をくらい、ろくにしゃべりもせず、抜け殻のような日々を送っていた。高校で生物教師をしている妹、マーサ。内気でどこか影のある彼女、共に暮らしていても毎晩酒におぼれ、ろくに会話もない兄の世話と心配に明け暮れる日々を送っていた。そしてそれが彼女自身の言い訳にもなっていた。

そんななか、突然ひげもじゃのメグスが現れた。『今日は解禁日だ、マス釣りに行こう』と。
最初は警戒していた彼女だが、気晴らしに、そして毎日酒におぼれる兄の為にもと、二日酔いでいやがるデビットを連れ、3人でマス釣りにでかける。

釣り場への途中、3人は食事をとるために、店へよる。そして車へ乗り込む時メグスはデビットに言った。
『妹は俺に気があるようだぞ』
『バカいえ、俺へのいやがらせさ』


釣り場へ着いた3人。それぞれ釣りを始めるが、しばらくするとデビットは釣りをやめ、酒ばかり飲みはじめる。
そんな彼にメグスは近づき言う。
『調子はどうだ。』『マスの野郎、岩場の下にばかり隠れていやがる。』
『岩の下にずっと隠れている、つまらない人生だよな。・・・・』
そう言う彼は死んだボビーの帽子をかぶっていた。



途中まではそれなりに楽しんでいたが、マーサがマスを釣った時に、お調子者のメグスが彼女を抱きかかえ、一緒に川へ倒れ込んでしまう。それを上の岩場から見ていたデビットは喜んでいたが、この日も散々酒を飲んでいた彼は足をとられ転んでしまう。

家に帰った3人。ずぶ濡れのマーサは車から走り家へはいる。メグスは『とんだ釣りになった』とつぶやきながらデビットを抱えて家にむかう。

気分を害していたマーサだが、身なりを整えデビットの部屋へむかう。するとデビットの部屋ではメグスが彼を静かに寝かしつけ、囁いていた。
『俺とおまえ、30キロ敵の中を突っ走った。俺は覚えている。ジャックナイフは記憶力がいい。』『眠れよ、ジャックナイフがみててやる。』
彼女は陽気に振る舞う彼の違う一面を見た・・・。


デビットはマーサに自分の勤務先をおしえ、デビットに気がむいたら電話くれるように伝えてくれと言い、家を後にした。
優しく兄・デビットに接するメグスにマーサは惹かれてゆく。そして当然自分にも。
そんなメグスのことをデビットはただの知り合いだと、友達ではないと言い続ける。彼はメグスがボビーを殺したと思っていた。そして、メグスにもある負い目を感じていたのだった・・・。



それでもメグスはボビーの帽子をかぶりデビットのもとを訪れ、ビールを飲もうと誘う。
ベトナムの話をするメグス。するとデビットは言う、
『戦争はなかった。』
『何のことだ』
『戦争はなかったんだ、過ぎ去ったことだ。何もなかったんだ。』
そういってデビットはビールを飲み続ける。
彼は戦争の存在自体をなくそうとしていた、彼の心の中から・・・。


ある晩、メグスはベトナムの出来事を思いだし、車で飛び出す。そして同じく帰還兵のジェイクを訪ねる。2人の会話、メグスが言う。
『帰って昔の友達にあった。』
『帰還兵か?』
うなずくメグス
『助けるのか?』ジェイクが尋ねる。
『助けなら俺がほしいよ・・・。おまえも戦場のことを?』
『毎日思い出すよ』
『その友達にあっていろいろ思い出した。』
『そういう話をきくと安心する』ジェイクは静かにうなずいて続けた。『俺だけじゃないことがわかる。1人じゃないと思うと心強い。孤独は人の心をむしばむ。帰還兵に限らないことだがね・・・。』
メグスはだまってうなずいた。そしてこう口を開いた、
『その友達に妹がいるんだが・・・・』


自動車工場で働くメグス。そんな彼をある日マーサが訪ねる。2人は食事をするが、最初互いにぎこちない2人。だが、今度はメグスが土曜にドライブに誘う。
天気のよい土曜日。特に行き先を決めないあてのないドライブ。
そこでメグスが向かったのはベトナムで命を落とした兵士達の名前が刻んである碑であった。

メグスはマーサに言った。
『俺達三人は仲がよかった。』『だがボビーは死んだ、帰還当時は荒れたよ。』『ケンカで死にかけたこともあるし、ある晩首をつろうともした。そんな時、神に祈った。おちついたよ。』
更につづける、
『起こったことは変えられない、ボビーは死んだ。でも犬死にしたくない。俺が生きる。』

彼はボビーの名前を指で何度もさすった・・・・。

ボビーは撃たれたメグスを助けようとして、彼の目の前で撃たれて死んだのだった・・・。



2人は付き合い始めた。
それを知った兄は反対する。

するとマーサが兄に言う。
『デビット、なぜ急に私のことを心配するの?』
『妹だろ』
『料理女か、家政婦では?』『私に1日でも言ったことがある、マーサ、良い一日だったか?って。』


ひとり殻に閉じこもり続けるデビット。
そんな彼のもとへメグスは何度も訪れる。そして、なんとか心ひらかせようとするが彼はかたくなに心開かない。それでもメグスはデビットを座談会に無理矢理つれていく。それは帰還兵があつまり、ひとりづつ自分の心の苦しみを打ち明けるものだった。ある1人の男が話しているとき、デビットは耐えきれずに飛び出してしまう。

メグスあとを追いかけ言った、
『デビット、我慢して聞くんだ』
デビットはそれを無視し出て行ってしまう。
同席していたジェイクがメグスに言う。
『彼にひきづられるな。元の黙阿弥だぞ。』


自分も一度は傷つき、荒れた人生を送った。しかし立ち直ったメグスはデビットにも立ち直ってほしかった。そして、彼をたすけようとする中で、自分の幸せも自分では心の中で葛藤をいだきながらも、みつけようと、つかもうとする。それはつまり彼自身の為でもあった。

デビットも自分なりに現実をうけいれようと努力はしていた。しかし、結局かれは耐えきれずに現実から逃げ続けていた。全てを他人のせいにして、そして自分をも憎み続けて・・・・。

兄の心配をしつつも、結局は自分自身せいで幸せをつかめないでいたマーサ。彼女は心優しいメグスに自分の思いを、自分自身をかけようととしていた。


この3人の静かな、おとなしい展開の物語。だが、切々と心に響きかけてくる画、行動そしてセリフ。そして哀愁をおびた音楽がひしひしと身体にしみてくる。
おとなしいが、非常に強く心に響くものを感じる作品である・・・。



デビットを助けたいと思いながらも自分の幸せをつかもうとうれしそうに行動するデ・ニーロがとてもかわいく見える。


マーサは高校の卒業パーティにメグスを誘った。
それを知ったデビットはもう付き合うなとまた反対する。

『あんなろくでなしと付き合うな!』
『ろくでなし?自分はなんなの?』『ムスっとして話もせず、だされた食事をたべるだけ、犬を飼うほうがまだマシよ。犬なら夜でていって死のうとしたりはしない!』

重苦しい雰囲気につつまれる画の中、時にみせるデ・ニーロの行動とセリフが場面を明るくさせる。


高校でマーサとダンスを踊り、はしゃぐメグス。
そこへ酔ったデビットがやってきて、高校に廊下で暴れ始める。そこには自分の英雄だった頃の写真やトロフィーが飾ってあった。デビット、彼はボビーの死を受け入れられずに、彼の亡霊にとりつかれ、孤独に殻に閉じこもり、現実をみられずにいたのだ・・・。

デビットが暴れる中、生徒や教師たちが集まりだした。そこにはマーサそしてメグスも。
メグスの姿をみたデビットは彼に言った。

『ボビーは殺したのはおまえだ。あの時、ヘリに残っていればボビーは死なずにすんだんだ!しかし、おまえらは飛び降りた。殺せ!殺せ!殺せ!と。』

黙ってきいていたメグスが口を開いた。
『俺は徴兵、おまえは志願兵だろ?。戦争もスポーツだと思ったのか!怖じ気づきやがって。』
デビットはメグスに掴みかかった。


ヘリで戦場にむかった部隊。他の兵士がヘリから飛び降りる中、デビットは怖じ気づき、いやがったいたのだ。兵士をおろしてヘリはすぐに立ち去れなければなならい。怖じ気づく彼をメグスとボビーは飛び降りさせた。体勢がととのっていないデビットは足をくじいてしまう。
そこへ続けてとびおりたメグスが駆け寄り、彼は撃たれ倒れる。ボビーがデビットを助け部隊まで連れて行く。そしてすぐに倒れているメグスを助けにいこうとする。するとデビットが言った。
『ボビーよせ、行くな!』『行くな、戻ってこい!ボビー!』
ボビーはメグスに向かって銃弾の飛び交う中、走ってゆく。その後ろ姿にデビットはこう叫んだ、
『ジャックナイフは死んだ! ジャックナイフは死んだよ!!』
・・・・・・・


これが真相だった。

胸ぐらをつかまれたメグスは言った、全ての真実を。
『怖じ気付いて飛び降りそこね、自分で足をくじいたんだ。俺は駆け寄って撃たれた。血を流しながら聞いたよ、おまえが叫ぶ声を。 行くな!ジャックナイフは死んだ!』『ボビー行くな!ジャックナイフは、奴は死んだんだ!』『だが、ボビーは俺を助けに戻った!』

メグスを放し、デビットは駆けだした。そして車へ乗り込み走り去った。
その後ろ姿にメグスは叫ぶ、
『記憶から逃げるつもりか。ボビーは死んだだ!』
デビットはつらい現実を受け入れられずにいた彼、全てを他人のせいにし、自分自身をも憎み、殻に閉じこもっていたのだった。


家にもどり、マーサと2人デビットの帰りを待つメグス。デビットを捜しにいこうとするメグスをマーサは止め、ブランデーを飲んでとグラスをだす。
そこへデビットが帰ってきた。

マーサに謝るデビット。けがをしている彼をメグスはイスに座らせ、優しく介抱する。
落ち着きをとりもどし、自分を介抱するメグスをまじまじと見つめるデビット。すると彼は口を開く。
『ジャックナイフ・・・』
『そうジャクナイフ、ボビーは俺をそう呼んだ。彼はあだ名の名人だ。』『自分のことはレッド・ソクスと呼んだ。ファンだった。』
するとデビットが言った、
『帰国したらファンウェイ球場で応援しようと・・・。』

3人は帰還したら一緒やろうと、ある2つの約束をしていた。
一つは、ファンウェイ球場へいってレッド・ソックスの応援をすること、そしてもうひとつは・・・・。



淡々とすすむ話、展開だが、なかなか本がいい。2人の戦争に傷をひきづる男と淋しい女。友情と愛をからめて話がすすむ。
その3人の演技、そのおとなしさがかえって画面にひきつけてはなさないあふれる力を感じる。

最後のデビットが現実と向き合い座談会でボビーの話をするシーンがいい。彼のその言葉はメグスにも、彼の心にも聞こえていたのだ・・・・。最後はデビットが彼をある意味救う、いや、ボビーが彼を救った、そしてデビットの立ち直りそれは、マーサ、そして何よりメグス自身の真の立ち直りでもあった・・・・。


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