たたきあげ艦長の悲しいサガ~「クリムゾン・タイド」

ロシアで反乱軍が核ミサイルを奪取し、米国と日本を攻撃すると脅迫してきた。

この事態に核兵器を搭載した米の原子力潜水艦アラバマが緊急出動した。艦長はたたき上げのラムジー大佐。副艦長は新任のエリート、ハンター少佐。目的海域に達したアラバマは敵艦が近くにいることを察知し、深度をさげる。その為本国からの指令受信中に通信が途絶える。指令の確認を優先とする副艦長と即時攻撃を主張する艦長は激しく対立し、艦内は緊張が走る・・・。


「クリムゾン・タイド」  アメリカ 1995年

監督 トニー・スコット

主演 デンゼル・ワシントン ジーン・ハックマン


実戦を経験しているたたき上げで、頑固で融通のきかない、艦長・ラムジー大佐とインテリでエリート、何事にも慎重に行動する副長・ハンター少佐。
この2人の指揮官の核ミサイル発射直前状態にある潜水艦内での対立の映画。

とにかくこの2人の行動、対立がおもしろい。

ハッキリ言って水と油の性格ですが、ラムジー艦長は人を見る目は優れています。随所にそのシーンがみられます。また迷わず行動するあたりは指揮官としても適任。人を使うすべも知っている。しかしそれは良くも悪くも・・・

鑑が潜水して上官達が食事をしているシーンは大変興味深いです。
ラムジー艦長のセリフ、自己と副長の分析が。
そして、そのシーンの最後、ハンター副長が艦長からの質問に答える形で言う。
「核の敵は戦争自身だ」と。
ラムジー艦長の顔つきが真顔になる。それは根っからの軍人としての彼には突き刺さる言葉だったのであろう。

自分自身の分析及びハンター副長も見事に分析する艦長。上記の通り、融通がきかず単純な自分と複雑で慎重な副長と。
火災事故直後のミサイル訓練を副長が不服としていることもすぐに察知する。
そして、指揮官の意見が対立すると下の者が迷う、艦長言うことには部下の前では黙って従えと言うラムジー艦長。彼の言うことは正しい。そしてその立場、場面をキチっと切り替えることのできる人物である。

ただ彼は昔気質の根っからの軍人。統制、命令が全ての人間。そして切り替えることができる故に融通がきかない。また彼は実戦を多く経験し、また艦長として艦を、乗組員を守る使命がある。そして当然、祖国を。
ハンター副長は緊急無線を確認したいが為に、ひとつだけミスを犯す。そのことがもとで敵艦からアラバマは攻撃を受けてしまう。このことも加わり、ハンター副長が正式の場で、つまり部下たちの前で反抗してきた時点でラムジー艦長は冷静さを失っていく。カミさんにも逃げられ、今は犬しかいない艦長の頑固さが彼をあやまらせる。


私が思うには、ミサイル発射訓練はともかく、ミサイル発射につきすすむラムジー艦長は間違いである。ハンター副長の言うとおり、米国が核攻撃をひとつの艦にだけだしているとは思えない。優先順位はあるだろうが、あらゆる場合を想定し、複数艦に発射準備命令をくだしているはずである。アラバマがうたなくても他艦がうつ。

そして、一度発射命令をだした限り、再度緊急電報がはいるということは、なんらかの変更がある以外には考えられない。

しかし、ラムジーは確認できない命令は存在しないと一緒だと確認を優先するハンターの意見に耳を傾けない。

調査委員会で委員長がいう。
「結果的にはハンター少佐が正しかった。しかし、法規的には2人とも正しかったし、2人とも誤りだった。軍全体が本質的にかかえる永遠のジレンマだ」と。
そうかもしれないが、それでかたづけるのか・・・

オフレコで事態は深刻だと付け加えているが、やはり最初のスーパーがつよく頭によみがえる。
「世界で最も力のある3人は・・・・」
合衆国大統領に権限がうつるのは当然だと思う。


とにかく、ジーン・ハックマン演じるラムジー大佐もキャラがとてもよい。

途中、副長が士気がおちているので、乗員に激励をと、言うと艦長はマイクをとり、
「緊張に耐えられない者は艦をされ」という。
「いいお言葉です」と呆然と答えるハンター副長。

さらに、3分間、無線の修理を待つ2人の会話で、馬の話で意見の食い違いがでる。そして、ラストのシーン、調査会からでできた2人、
「感謝します」とハンターが声をかける。
「君が正しかった」と答えるラムジー。真剣な面持ちでハンターは無言でラムジーをみつめる。
「リピッツアー種はスペイン産だった」
馬の話であった。
ハンターは笑い、
「イエッサー」とこたえ敬礼するハンター。ラムジーも笑顔をみせ去ってゆく。

ラムジー大佐らしさがあふれているシーンである。
この作品は彼の軍人としてしみついた悲しいサガをとても強く感じる・・・


ジーン・ハックマンはこの手の頑固なたたき上げ指揮官役がよく似合う。私は途中、この艦長はどうしてもミサイルを撃ちたがっているように見えてしようがない。さすがである。そしてあのごついラムジーがかわいらしい犬を連れているのがなんとも妙でいい。

デンゼル・ワシントン演じるハンター少佐もカッコいいのだが、ハッキリ言ってジーン・ハックマンに食われている。

深い海の底での密閉された館内での対立、敵艦との魚雷シーンなど緊迫感がある。しかし逆にいえば対立が全てで、あとは無線が回復して命令が受理されたことでことがおさまる。
2人の間で駆け引き等はなく、形勢争いに終始する。都合よくはこぶ展開があるがそれは全ての映画にいえること。

そういう意味ではやはりトニー・スコットと言ってしまえばそれまでなのかもしれない。
しかし、昔の本当に勢いだけの映画よりはかなりいい(ただ設定がいいのか?)。
私はけっこう単純に楽しめました。

しかし、1996年まで、一潜水艦艦長に発射権限が委ねられてとは・・・・


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