出会い、別れ、そして旅立ち、それは全て・・・「駅 STATION」

オリンピックの射撃選手でもある刑事、三上英次。

彼は仕事と代表選手にえらばれたことで家庭を顧みずそれが原因で妻・直子と離婚してしまう。家庭より仕事、オリンピックを選んだことを先輩刑事に非難される三上。そんな先輩がある日、凶悪逃亡犯の銃弾によりこの世を去ってしまう。復讐を誓う三上だが、上司よりオリンピックに専念しろとの命がくだる・・・
その後、彼は射撃のコーチとなり、ある暴行犯逮捕の為、その妹を張り込むこととなる。周囲からはトロくて人を騙せるような娘ではないとおもわれるこの妹。捜査本部も張り込みをあきらめかけた時に、兄と会うとの情報がはいる・・・
そして、さらにその後、三上は射撃チームから新設の狙撃班をまかされることになる。的から人を撃つ仕事にかわり、そこに過去の思いもめぐり、年末、故郷に帰る彼は仕事の継続を悩んでいた。港についた三上だが、吹雪で故郷へ向かう船は欠航。仕方なく旅館に泊まる事にし、その夜、彼は“桐子”という居酒屋へ入る。そこの女将・桐子。どこか影にあるこの女は昼間、駅で誰かを待っていたのだが・・・


「駅 STATION」  1981年 東宝
  
監督  降旗康男
製作  田中壽一
脚本  倉本聰
音楽  宇崎竜童

主演 高倉 健


主役の健さん、三上英二に3人の女性が絡む3部構成から成り立つ本編。

1968年 1月 直子

雪が降り積もる冬の北海道の駅舎。

直子は息子と遊んでいる。
すこし離れた場所で、男が2人たっている。

「やりな直せないのか、あいつはもう十分に苦しんだ、たった一度のあやまちじゃねえか、忘れてやるわけにはいかねえのか」
直子の父だろうか、三上に問いかける。
無言の三上。

無邪気に子供が「お父さん、駅弁買ってほしい」と走ってくる。
三上は弁当を3つ買い、子供にもたせる。

「英二さん」再び直子の父。
「すみません・・・」

ホームに列車がはいってくる。乗り込む3人。
列車が動き出す。
泣き崩れそうになりながらも直子は目に涙をため、気丈にも笑顔で敬礼する。動き出す列車のデッキで・・・

この冒頭の4分半、いきなりあの名シーン。

最近、本当に歳なのか、涙腺がよわい・・・


三上はオリンピックの代表に選ばれ、家庭を顧みずにその結果、犠牲にしてしまう。
大滝秀治扮する先輩刑事が言う、
「バカだ、おまえは。ふつうは家庭を捨てるくらいなら、仕事をすてたほうがよっぽど気がきいてる。しかもたかがオリンピックに・・・」
「オリンピックの代表にえらばれたんですよ。お袋が泣いて、お国の為に頑張れっていうです。お袋の泣き声きいたのは初めてなんです。」
警察の食堂で話す2人に事件の知らせが。

現場に出た2人。拳銃を持った凶悪犯の検問。その検問中、三上の目の前で先輩刑事は撃たれてしまう。彼は息をひきとった。

三上は捜査への参加を要望するが、オリンピックに専念しろと命令がくだる。
警察の食堂に戻った三上、その食堂のテレビから東京オリンピック、マラソンで3位銅メダルに輝いた陸上自衛隊員の円谷幸吉が遺書を残し自殺したとの一報が放送される。

彼の遺書が朗読されるそのバックで、健さん、三上が先輩刑事の葬儀で傘もたたずに降りしきる雪の中たたずむ。そして、彼は駅へ向かう。
“もうすっかり疲れきって走れません・・・”
円谷の言葉が響く中、オリンピックを選んだ三上は妻を見送った駅舎に独りたたずむ・・・・



1976年 6月 すず子

三上はオリンピック出場後、チームのコーチになった。

互いに強く思いやる兄と妹。

その兄は赤いスカートをはいた女性ばかりをねらい暴行し殺す凶悪犯。
普段は優しい男が、赤いスカートになにか理由があるのかは不明だが、妹にちょっかいをだすと人が変わった様に激怒する。

三上は自分と妹の関係が脳裏で重なる。

地元の後輩が妹に手をだしそうになり、ぶん殴ってしまう、そんな昔を三上は思い出す。

妹が働く駅のそばの食堂をむかいの旅館の窓から三上は張り込みを続ける。
まわりからは知恵がたりないと思われている妹は、愛する兄を救う為に回りの全ての人間、刑事たちをも騙し通す。ただ一人、優しくしてくれる地元のヤンキーを除いて・・・

音楽も担当している宇崎竜童が、芝居はヘタながらいい味をだしている。

兄との待ち合わせ場所を聞き出し、刑事達が張り込む。場所は駅舎・・・

兄、吉松五郎は逮捕される。
三上の相棒、小林稔侍扮する刑事が、
「三上さん、俺には信じられんすっよ、あのトロイ娘が俺たちを今まで芝居で騙していたんすか・・・」
兄弟愛がそうさたのか。
三上は無言で現場をみつめる・・・

事件後、三上は標的の前にたち、引き金を引き続ける。

自分の気持ちの中でことあるごとに妙に自分と重なり合う部分を感じた三上は、この凶悪犯に死刑執行の時まで、差し入れをつづけた。

その三上の正体をしらない五郎から、最後の礼の手紙が三上の元にとどく。
そこには辞世の句が・・・

“暗闇の 彼方に光る一点を
   今 駅舎の灯と信じつつ行く”



1979年 12月 桐子

あの倍賞智恵子と居酒屋で舟歌を聴く有名なシーン。

三上はオリンピックチームのコーチから新設された狙撃犯の責任者となっていた。

この章、あえて詳細は記述しないが、逃げられない現実の日々と過去の様々な想い、過去の出来事を思い出させる女、その狭間で三上は苦悩する。激しい嵐のごとく。
そこに絡む一人の影のある淋しい女。二人ともある葛藤をかかえているもの同士、惹かれ合う・・・
退職し里へ帰ることを決意する三上、それをおもいとどまらせる場所、それがまたも駅舎・・・


私の好みでない富良野の物語を長々と書く倉本聡だが、こういうのも書ける。「冬の華」といい、まさしく健さんを思って書くのだろう。まさに健さんの為の、健さんでなくては演じられない作品である。里の身内や仲間たちの絡め方、その設定も非常にいい。それにしてもやってくれる。自分自身のせいながらも男の哀しみがあふれている。

思い悩む自分がいながらも、後輩・先輩の前では毅然とし、またしなければならない命がけの危険な現場。その中でさまざまな葛藤を抱え、生きていく三上。不器用にしか生きられない男・・・
語らずとも演じる、その存在感。本当に語らない。こちらが怖くなるくらい・・・
監督や脚本家が惚れて書く理由、それはこの作品をみれば十分に分かる(他の作品でもわかるのだが)。
ここまでくると、展開だの、テンポだの、本だの、カメラワーク?!そんなものどうにでもしてくれ。主役の魅力とオーラとでもいうべきその画面からの存在感、力。それが全て。
とはいってもなかなかいい脚本である。過酷な運命ではあるが・・・
寡黙に不器用に生きる男・・・女の誤解をとくこともせずに・・・
う~ん、うなってしまう。そして、叫びたくなる。健さ~ん!!!!

ただあえていえばラスト、列車内にのりこんだ健さんのアップではなく、辞表を破り捨てた段階で決心できているのだから、列車のドアから烏丸をみつめ、駅員とのやりとり後、目線をはずし、車内に乗り込む後ろ姿のみで、あとは烏丸が列車にのり、走り出す。
これのが私の好みなのだが。
あの車内での明るい画がどうも違和感がある・・・

でも降旗の画もいい。適度なハイスピードでの映像は効果的である。そして、遊び心のあるシーンも描いている。
そして、今おもうとキャストもいい。倍賞智恵子、いしだあゆみ、烏丸せつ子、池辺良、永島敏行、根津甚八、古手川祐子、寺田農、小林稔侍など・・・みんな若い。

語らぬ健さん、三上に苛立ちをおぼえつつも、これが彼の生き方、その姿が深く心にしみる1本。


全てをつつみこむかのような深い雪、そして多くを語らない健さんとその表情。そして風景描写。ひとときの安らぎを感じつつも駆けめぐる過去の思い。舟唄が身にしみる。
撃つ目的はかわっても所詮はしみついた警察官としての思い。悩んだ末、いや悩みながらも結局、三上は自分の居場所にもどっていく。駅舎から・・・


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